四つ葉のクローバー

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「到着したぞ」  光の穴を抜けると、そこは青空が広がる草原だった。  現代では暗雲に覆われ消えてしまった眩しい太陽の日差しが照りつけ、近くには透き通った川がそよそよと流れていた。  アリアは見たこともない風景に心を奪われていた。そよぐ風に髪を揺らし、聴こえてくる鳥のさえずりに耳を澄ました。  ブルーマーを川の土手に着陸させると、二人は若草の生えた地面に足を降ろした。 「こんなところがあるなんて……」 「現代では見ることのできなくなった地上の景色。先の大戦で放たれた黒呪術『エンド・オブ・ザ・テルス(大地の終焉)』が大地を腐敗させてしまい、地上で生活することができなくなったからな。魔染病の罹患者(りかんしゃ)も後を断たない」 「ここで探しているものって……」 「ああ、『四つ葉のクローバー』だ。君も魔女なら知っているだろう? かつて幸運を引き寄せるために使われていたマジックアイテムだ。水晶アーカイブで検索してみたんだけど、この時代まで(さかのぼ)らないと入手できないことがわかった。一般的な時間魔法だと、戻れるのはせいぜい一、二年。だからブルーマーに術式を組み込んで、ハイパージャンプできるように改造したんだ」 「そこまでして何のために必要なの?」 「さあな、俺はただクライアントの要請で採取しに来ただけだ。それにしても……ここから『四つ葉のクローバー』を探すのは至難の業だなあ、悪いが手伝ってくれるか?」 「私が?」 「見つけないことには帰れないからね。ここはお互いの利益のために協力しようぜ」 「……仕方ないわね、それじゃあ私は野原の右のほうを探してみるわ。あなたは左を探して」  アリアはしゃがみこむと、草むらに目を凝らした。その姿を見て、クローネはぷっと吹き出した。アリアがクローネにキッと視線を投げつける。 「……何よ」 「いや、そのピッチピチの黒スーツで雑草と(たわむ)れる姿が、おかしくて」  笑いをこらえるクローネに、アリアは顔を赤くして口を尖らせた。 「ひどいわね、あなたモテないでしょう? そのお尻を蹴飛ばしてやりたいところよ……」
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