108人が本棚に入れています
本棚に追加
時空間トンネルを潜っている最中にアリアは一人呟いていた。
「これで私は捕まってしまうけど……妹の命を救うことができる」
「ああ、それなんだが……このタイムブルーマーひとつ大きな欠点があってな、大量の魔力を消耗するから代償として元いた時間に帰れないんだよ。少し前の時間までしか辿り着けない」
「何が言いたいのかしら?」
「君が事件を起こす前の時間に戻るんだ。つまり君は無罪放免ってことさ。光が見えてきた、あそこが出口だ」
光の環を抜けると、大きな満月の闇夜に巨大な尖塔が現れた。
ブルーマーはそのまま尖塔に向かい、松明に照らされた石造りのテラスに静かに着陸した。二人がブルーマーを降りると、アリアは辺りを見回した。
「ここは……?」
「魔導科学研究所だ。ここの所長が今回の俺のクライアントだ。付いてきな……」
テラスから繋がる通路を二人で歩くと、やがて守衛が左右に並ぶ大きな扉が見えてきた。
「俺だ、久しぶりだな」手をあげて、守衛に声をかける。
「クローネか、今回のトラブルは何だ?」守衛たちが苦笑する。
「いや、所長からの頼まれごとだ。扉を開けてくれるかい?」
守衛たちはおもむろに両扉を開くと、その先に大きなデスクがあり、一人の老婆が座っていた。
最初のコメントを投稿しよう!