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三日月のあかりに照らされた大小の超高層尖塔が所狭しとそびえ立つ街中、ふたつの赤い妖光が青い閃光を追い駆けていた。
「そこのジェットブルーマー、止まりなさい」
ドローン召喚龍から警報が発せられた。
「冗談じゃない……こんなところで捕まってたまるかっての!」
ジェットブルーマーを駆る女性は、両手で強く握ったほうき棒に増設されたブーストアクセルを一気に踏み込んだ。
尖塔群の狭間に青く光るほうき星の軌跡が一直線に刻まれる。
――指名手配中のブルーマーは停止する意思がない模様
――こちら魔導指令塔。了解、攻撃を許可する
思念共鳴により召喚龍に命令が下された。
「止まりなさい、さもないと発砲します。ファイヤーブレス放射」
召喚龍のオッドアイがターゲットをロックする。口が赤い炎に包まれると、無数の火の玉が放出された。
女性は上体を体重移動させて螺旋状の軌道を描きながら旋回し、その攻撃をぎりぎりのところで回避した。
「トラッキングサンダー照射」
召喚龍の角がバチバチと火花を散らすと追尾型の雷が放たれ、ブルーマーの魔力噴射口に直撃した。
ブルーマーは制御を失い、藍色の煙を吐きながら居住区の尖塔窓めがけて突っ込んでいく。
「ちっくしょう!」
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