空の広いまち

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 ところが次の夏を迎えると、ネット通販のいくつもの空の段ボールを解体していた私は、とにかく疲れていることに気がついた。仕事上の異動で業務内容が変わったことも大きかったかもしれない。  けれど、一番の理由はこの景色。  オフィスのフロアから眺める景色と、家のベランダから眺める景色がまるっきし同じだということに気がついたのだ――上に向かって突き上げるように伸びるビル群に、空を侵略された神様は怒りはしないだろうか。  私は、時たまそんなことを不安に思い、怒っているからこそ、いろんなことがうまく行かないのだと、暗いニュースを見るたびに考えるようになった。  数年経って、私たちはその町を出ることにした。  正直、高層ビル群に囲まれるのに疲弊していた。会社に近いのは便利だけど家に帰ってもリラックスできないし、家では仕事ではなく「生活」がしたいのだと彼も私も同意見だった。
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