Sigh

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Sigh

やっと寝付いた息子の頭を撫でながら、はぁっと一つため息を吐いた。 やっと寝てくれたと、それまでの悪戦苦闘を思って、そして再び戦地へ向かうことを思って、ため息を吐くことはよくある。 夕方保育園にお迎えに行って、二人の息子を連れての買い物。走り回る息子の後を追いかけながら、とりあえず目についたものをカゴに入れていく。周囲の大人たちの冷たい視線を感じながら、すみませんと何度も頭を下げて、あれ買って、これ欲しい、仕舞いにはおしっこーと、なんでこんなタイミングでと思いながらトイレに駆け込む。 どうにか会計を済ませて、真っ直ぐ歩かない奴らのお尻を叩いて、やっとの思いで自転車にたどり着く。 二人を前後ろに乗せて、保育園の道具とさっき買ったばかりの膨れ上がったレジ袋を下げると、あとは自分の脚力の限りを使い切って、自宅に向かってまっしぐらに突き進むのみ。 とにかく、時間との勝負。 遅くなればなるだけ、敵は難易度を上げてくる。 お腹が減った、眠いと、ぐずぐずし始めれば、全てが狂い始めて、そこはもうカオスと化すだけ。そうならないように、いかに早くお風呂と夕飯を済ませるかにかかっているのだが、そうやすやすと事が過ぎるわけでは決してない。 誘惑は山ほどある中、気をこちらに向けつつ、お風呂へと誘導して、何度も脱走を試みる奴らを、追いかけ回して確保して、二人の体を洗いあげる頃には、こちらが汗だくになっている。 裸のままで、服を着なさい!と何度言っても聞くわけないのに、言わなければ尚ことは進まないので、仕方なく体力使って、言いたくない言葉を繰り返す。 あるもので簡単に作った夕飯を皿に盛れば、やだー、カレーが良かった。スシロー行きたいと喚きだす。いい加減にしなさいと、声を荒げたところで効き目はなくて、怒られている兄を横目に、こそっと、お気に入りのおもちゃを食卓に持ち込む弟。 今度は二人しておもちゃで遊びだす始末で、躾が出来てないのは自分せいだろうと、落ち込みながら、とにかく食べなさいと促す。 宥めすかして、歯磨きまで終えて、ベッドに入る頃にはこちらの方がクタクタで、ばっちり昼寝して、まだまだ力有り余ってる子供たちより先に、まどろみの世界へと誘われる。 ママ、ママと揺さぶられて、絵本を読む頃には瞼が重くて上がらなくて… やっとの思いで寝かせつけた後に、散乱した部屋のことを思って、ため息を吐く。 このまま寝れたら、どんなに幸せだろうと。 食器を片付けて、洗濯機回して、そうこうしてたら旦那が帰ってきて、明日の準備に、洗濯ものを畳んで、干して、座る暇なんてどこにもなくて、風呂に入る頃にはぐったりだ。 でも、今日のため息はそんな日常に対するものではなかった。
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