4人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「菜穂、今日はやけに飲むなぁ」
テーブルの向かいに座って呆れたように笑うのは、付き合って1年以上経つ恋人の祥一郎。
「あったりまえでしょー。仕事で上司からめちゃくちゃ怒られたしー、残業までしてさー。そんでもって今日は花の金曜日!」
グッと拳を握りしめ、祥一郎を睨みつける。
「こんなの、もう飲むしかないっしょ!!」
「はいはい。好きなだけどーぞ」
「何よぉ。ノリ悪いわね……」
はぁ、と思わずため息がこぼれた。
「なんかさー。大人ってつまんないよね……」
「つまんない、とは?」
空っぽになったジョッキの飲み口を人差し指でなぞりながら、私は酔いに任せて愚痴を呟いていく。
「子供の頃は将来の夢も……まあ、一応あって。でもそれが難しいものってわかって。いや、わからされてさ」
「それで?」
「それからは、別に特別やりたい事じゃないような仕事に就いて。平日はずっとそれに追われて。休日はあっという間に終わっちゃうし」
こんなもの、私が望んでいた『大人』じゃない。
最初のコメントを投稿しよう!