face myself

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菜穂(なほ)、今日はやけに飲むなぁ」 テーブルの向かいに座って呆れたように笑うのは、付き合って1年以上経つ恋人の祥一郎(しょういちろう)。 「あったりまえでしょー。仕事で上司からめちゃくちゃ怒られたしー、残業までしてさー。そんでもって今日は花の金曜日!」 グッと拳を握りしめ、祥一郎を睨みつける。 「こんなの、もう飲むしかないっしょ!!」 「はいはい。好きなだけどーぞ」 「何よぉ。ノリ悪いわね……」 はぁ、と思わずため息がこぼれた。 「なんかさー。大人ってつまんないよね……」 「つまんない、とは?」 空っぽになったジョッキの飲み口を人差し指でなぞりながら、私は酔いに任せて愚痴を呟いていく。 「子供の頃は将来の夢も……まあ、一応あって。でもそれが難しいものってわかって。いや、わからされてさ」 「それで?」 「それからは、別に特別やりたい事じゃないような仕事に就いて。平日はずっとそれに追われて。休日はあっという間に終わっちゃうし」 こんなもの、私が望んでいた『大人』じゃない。
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