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僕は焦りを隠せずにいた。
もう一度探ってみたが、やっぱり無かった。確かにポケットに忍ばせていたはずなのに。
どこだ、どこで落としたんだ。
記憶を遡り、心当たりを探り、辿り着いたのは今朝のあの事件だった。
『続きまして、ニュースをお届けします。今朝...』
テレビは夕方のニュース番組を報じている。
『店員が抵抗した為、男は何も取らず逃走したとの事です。犯人ともみ合った際、男性店員が腕に軽い怪我を負いました。警察では犯人の物と思われる遺留品の鑑識を急ぐと共に、逃げた男の行方を追っています。以上、現場からお伝えしました』
まさか、あの時。脳裏にはあの忌々しい情景が鮮明に蘇った。
激しく抵抗され、もみ合いになった。勢いに圧倒されて転倒したんだった。その時にポケットからこぼれ落ちたのかもしれない。
お終いだ、僕の人生は終わった。
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