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「ヒロアキ、晩御飯出来たからテーブル片付けて」
僕を呼ぶ、母さんの声が聞こえてきた。
「うん、すぐやるよ」
絶望から解放されて、足取りは軽い。上機嫌でダイニングテーブルに置かれた物を片付けていると、姉ちゃんが台拭きを持ってきた。
片付けを待ってテーブルを拭き始めた姉ちゃんだったが、ふと手を止めてつぶやいた。
「ヒロアキ、今朝はゴメンね」
視線を合わせず、気まずそうに言った。
あの事を言っているんだなと、すぐに察しがついた。
今朝、トイレを使う順番が原因で取っ組み合いの喧嘩をしたのだ。僕がトイレの前に立ち、ドアノブに手を伸ばしている時に割り込んできた。明らかに姉ちゃんに非があった。
我が家では姉弟ゲンカは日常で、特に珍しくも何ともなかった。それよりも姉ちゃんから謝って来るのは珍しい事だった。
気分は最高潮だ。今朝のいざこざなんて、そんなちっぽけな事はどうでもよかった。
「僕の方こそ、ごめん」
先に掴みかかったのは僕だった、その事について素直に謝った。
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