探しもの。

1/6
前へ
/6ページ
次へ
僕は焦りを隠せずにいた。 もう一度探ってみたが、やっぱり無かった。確かにポケットに忍ばせていたはずなのに。 どこだ、どこで落としたんだ。 記憶を遡り、心当たりを探り、辿り着いたのは今朝のあの事件だった。 『続きまして、ニュースをお届けします。今朝...』 テレビは夕方のニュース番組を報じている。 『店員が抵抗した為、男は何も取らず逃走したとの事です。犯人ともみ合った際、男性店員が腕に軽い怪我を負いました。警察では犯人の物と思われる遺留品の鑑識を急ぐと共に、逃げた男の行方を追っています。以上、現場からお伝えしました』 まさか、あの時。脳裏にはあの忌々しい情景が鮮明に蘇った。 激しく抵抗され、もみ合いになった。勢いに圧倒されて転倒したんだった。その時にポケットからこぼれ落ちたのかもしれない。 お終いだ、僕の人生は終わった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加