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第一章
その厄災は唐突に訪れた。
発達した文明の機器ですら全くもって予測出来ない軌道を描き、狙い定めたように巨大な隕石がこの星に飛来した。
隕石は上空で無数に砕け、各地の大地を抉った。
生じた衝撃波は地の底を刺激し、火山を怒らせ、地震や津波を引き起こし、世界は忽ち混乱に陥った。
終焉とも呼ぶべき天変地異に多くの命が呑まれ、土地は大きく形を変えた。
荒れ狂った世に生き延びた人々は怯え狂い、負の感情は略奪や争いを呼び寄せ、それまであった多くの国や地域が崩壊した。
世界は渾沌に呑まれ、発展し過ぎた文明の時計の針は数百年あまり巻き戻った。
そうして、凄惨な厄災から十数年の月日が流れた頃―――…、この厄災が“星の裁き”と称されるようになった時、北欧の小さな島に、一つの国が立ち上がった。
国の名はラティエール―――、雪深き、北の大地に取り残された孤高の公国である。
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