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いずれ兄と共に、国を背負っていくことになる娘の背中は、その重責を背負うには、まだあまりにも華奢だった。
「あまり気負っては駄目よ?クロードも貴女も、まだ若いのだから…。それにね、母さんはこう見えても強いのよ?ヴィラディアンのような野蛮な連中を野放しにしたまま、大公を辞めるものですか…!」
力瘤を作って見せ、まだまだ元気な姿を鬱陶しい程の仕草でアピールして見せる。
そんな母の優しさに、エレンジェールは思わず笑みを零し、困ったように眉を下げた。
議会や公務の場では冷静で厳格であるのに、心の底では民の事を誰よりも想い続けている―――。
こんなお茶目な所も、国民から愛される理由なのだと、娘ながら感心していた。
「それに私達には頼もしい騎士がいるじゃない?」
不意に母、大公はニッと口角を上げた。
エレンジェールはその言葉に、母と同じように笑みを浮かべた。
「そうでしたね。新設した公国騎士団の団長に抜擢された……」
そう言い掛け、エレンジェールは、はたとカップを取ろうとした手を止めた。
そして、バッと立ち上がり、声を上げた。
「いっけない!頼まれていたレモネード、届けるの忘れていました‼」
約束を思い出し、騒然する娘に大公は苦笑い。
挨拶も適当に、バタバタと部屋を後にした娘を見送り、大公は困ったように微笑みながら、憂いの溜息を零した。
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