序章 彼女は残された

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序章 彼女は残された

 仰け反る程に大きな扉を前に、サハナは呆然とする他なかった。  故郷へと通ずる道への入り口が目の前で唐突に閉ざされ、たった一つの帰り道を失った。  こんな事故に遭遇するとは思わなかった。  運が悪過ぎるとしか言いようがない。  ここは故郷より何億光年も遥か遠い大地、太陽系の惑星アース―――。  それ以外、彼女が今知り得ていることは何もなく、あるのは、かつて故郷を襲った人間達が住まう土地であると言う、ただ漠然とした認識だけだった。  一刻も早く、故郷に戻らなければ―――…。  思い立ち、巨大な聳え立つ扉に縋りついた。  しかし、既に何もかもが手遅れだった。  足元が抜け落ちそうな程の絶望が、目の前にあった。
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