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その紙切れには会社の業績が記されていた。
1年前から今月まで。
絵に書いたような右肩下がりだ。
「これで少しは分かって貰えただろうか?数年程前の不況とも比べものにならない程の業績不振なんだ。君はよく働いてくれているし、本来ならこのような形は望んでいない。だけど、、、どうしようもないんだ。」
人事担当の方も苦渋の決断なのかもしれない。
こういう役回りは辛いんだろうな、、、
自分が今苦境に立たされてしまっているにも関わらず、私はそんな事を思ってしまった。
「妻帯者はなるべく残してあげたくてね。もちろん希望退職を募ったり、ある程度先がある人を選んで伝えさせて貰っている。君はまだ若いから申し訳ないが選ばせて貰ったんだ。」
、、、若くはないわ。
27歳、独身。彼氏無し。
未来がある訳では無い。先にあるのは絶望だ。
だけど、世の中の理不尽なんてこんなものなだろうと腹を括るしかない状況にあるみたい。
「、、、本当にすまない。」
形だけの謝罪なんていらない。
この人も、会社も悪くない事は分かってる。
でも私はこのふつふつと湧いてくる感情の矛先を一体どこへ向けたらいいというんだろうか―。
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