敗北

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体を庇うように歩き続けた。 足がほつれて転倒しそうになる。 体を捻って重心をずらす。 両足で地面を捉えて、体勢を立て直す。 杖になるものがなく、ひたすら歩くしかなかった。 左目の出血で視界が悪い。 世界が半分、黒い液体でどろりと覆われた。 血が邪魔で手で払おうとすると、痛みが走る。 稲妻の如く全身に痛みが伝わる。 左目の痛みは酷かったが、 切り裂くような痛みから鈍痛に変わっていた。 痛みが麻痺してきてことはわかっていた。 俺は欠けた歯で声を押し殺して笑う。 痛みを感じていられることが嬉しかったからだ。 今回の作戦は、おおかた成功したと言えるだろう。 少なくとも俺はそう思っている。 だが、どんな戦場においても、 成功は即ち犠牲者ゼロを意味することではない。 「敵部隊を戦闘不能あるいは殲滅」という作戦は達成されたが、こちらの部隊の被害も甚大だ。 大勢の仲間が死んだ。 少数の仲間だけがまだ生きているが。
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