息ぴったり

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息ぴったり

文子さんはあれから他県に引っ越して行った。中古だけど、庭付きの一軒家で野菜作りをして楽しいとLINEが来ていた。 2ヶ月後…牧子夫婦は相変わらずだった。 「あんた、どっから入って来たの?」 「俺はカメ虫か!おかえりだろ?」 「だまれ!不法侵入者!」 …バチッ! 「お~臭いよ~臭い!」 「叩かれても、嫌われても、私は一生、あなたにとりつくカメ虫です」 ハハハハハハ あはははは …ふたりは老人ホームで、夫婦漫才を行っていた。 どこにでもいるような夫婦は、 どこにでもあるような話をして どこにでもいそうな老人たちは、 似たようなリアクションで笑った。 その、ひとときは、もう二度と無いことを みんな知っていた。 結婚とは、ふたりで、世界にひとつの物語を作って行くものです。 …まさに二人三脚です。 でも 息ぴったりでないと、転びますからね。 終わり
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