235人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
何も言わない私を見て
「大丈夫です。エマ様もアリア様の幸せを一番に想ってくれています」
そう、お母様はきっと天国で笑って見守ってくれている。
あの時、ディラン様と生涯の誓いを交わす前、私に勇気をくれたのはお母様だから。
そんなことないって、空耳だって言われるかもしれないけど
「好きなように生きなさい」
そう背中を押してくれた。
…―――…
「また来てね?今度は、私が作った料理をご馳走するから!」
帰ろうとしているレオに声をかける。
「はい!また遊びにきます。それで……。俺もアリア様みたいな女性と交際できるように頑張ります」
レオの顔が少し紅潮したように見えた。
「ありがとう。冗談でも褒められて嬉しい!」
「レオ。今度会った時に――」
クリスが何かを言いかけたが
「それじゃあ。また!お元気で!」
彼は足早に帰って行った。
「何か用事でもあるのかしら。最後は急いでいるように見えたけど……」
「あれは、私が怖いからでしょう」
「えっ?」
怖いってどういうこと?
「アリア様。今日の夜、星空を見に行きませんか?」
クリスの言葉を聞いて、私の疑問はすぐ忘れ去られた。
「はいっ!行きます」
その日の夜――。
「さぁ。行きましょうか?アリア様、髪留めを付けて行くんですか?」
私が短くなった髪の毛に髪留めをしたら、クリスが不思議そうに問いかけた。
「ええ。これは、クリスとのデートよ。少しでもオシャレをして行かなきゃ。エマお母様が残してくれた数少ないものだし。夜だったらつけていても目立たないでしょ?」
彼はフッと笑って
「はい」
返事をしてくれた。
家から出て、彼と手を繋ぎ、しばらく外を歩く。
空を見上げると輝く星々があった。
「わぁ。綺麗」
届きそうな星空に手を伸ばしていたら
「これでもう少しだけ近くなります」
クリスが軽々と私を持ち上げてくれた。
「ホント!さっきよりも近くなったような気がするわ」
私が笑っているとクリスも微笑んでくれた。
最初のコメントを投稿しよう!