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第一章 救世主
「アリア様!?全く、どこに行ってしまわれたのかしら?これじゃあ、私が奥様に怒られてしまうわ」
廊下を歩きながら、私を探す侍女の声がする。
急にいなくなった私を心配しているのではない。
義母から言われ、私を監視しているのだ。
私の名前は、アリア・フランシス。
貴族令嬢として育てられてきた。
しかし私はここ半年以上、外に出ていない。
母(エマ・フランシス)が病気で亡くなって間もなく、父(エドガー・フランシス)は再婚をした。
再婚相手は、イザベラという女性だった。イザベラには、ナタリーという子どもがいて、再婚と同時に親子で屋敷に引っ越して来た。
彼女たちは、貴族ではない。そのため当初は、再婚に反対する者もいた。もちろん、貴族同士の結婚が主流だったからだ。
しかしお父様は、義母を庇うように反対をする人たちに説得をし続けた。操られているのではないかと思うくらいに、義母を愛しているみたいだった。
私は再婚に対しては複雑だった。貴族の階級など、正直私はあまり気にしていない。ただ、母の死をすぐに受け容れることができなかったし、死後直後に再婚をする父の気持ちが理解できなかった。嫌だと言う私の意見は通らない、それはわかっていた。だから父に従うしかなかった。
義母の連れ子であるナタリーは、私より一つ年上、兄妹がいなかった私は、姉ができたということだけが嬉しかった。仲の良い姉妹に憧れていたからだ。
母のエマは貴族の生まれでもあったが、オペラ歌手だった。そのため私も歌を歌うことが大好きで、エマお母様の前座で歌わせてもらったりもした。人前で歌っても認められるくらいの歌唱力は、母の血筋だと思っている。
父が再婚をして姉ができたら、一緒に歌を練習して大きな劇場で発表をしたい、そんなことを夢見ていた。
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