第四章 生まれ変わっても

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「レオ。ありがとう。あの時あなたが助けてくれたから、こんな幸せな生活ができているの」  あの時、レオが助けてくれなかったら二人とも捕まっていたかも知れない。 「いえ。俺の方こそ。クリスさんが俺の家族を含めていろんなことを準備してくれていたおかげで、俺も今自由な生活ができています。家族も元気にしていますし。イザベラから何かされたことはありません。もうあの人にはそんな力は残っていないと思いますから」  イザベラ……。  イザベラ様とはもう呼ばないのね。  久し振りに聞く義母の名前。  レオは私たちを外に逃がした後、なんとか上手く現場に戻り、やり過ごしたらしい。 「もうダメかと思いましたけど。アリア様と約束したので、最後まで諦めませんでした。警備の人を何人も気絶させちゃったし、顔を見られている可能性もあったので、共犯かと思って疑われるかと思ったんですけど……。あの後、バタバタで……。なんとか誤魔化すことができて」 「そう。大変だったわよね。ごめんね。本当にありがとう」  レオはあの後、一人で頑張ったんだ。私たちも逃げるのにやっとだったけれど、あの騒ぎの中にいたレオの方が大変だったわよね。 「俺が知っている、その後のフランシス家について話ましょうか?」  あの後のフランシス家……。  噂では聞いている。  街でそんな会話が聞こえてきたら、クリスが私に気を遣って 「聞かなくて良いことです。あなたはあなたの幸せだけを考えて生きていけば良い」  そう言っていつも耳を塞いでくれた。 「レオ。話さなくて大丈夫です。もう私たちはフランシス家とは関係な……」 「レオ!教えて!私がいなくなった後のフランシス家について」  クリスが止めようとしたのはわかった。  けれど、もういい加減受け止めなきゃいけない。私が生家にしたことを――。  実の父も、義母も義姉も使用人の生活さえも裏切ってしまったことを受け止めて生きていかなきゃいけないから。 「アリア様……」  クリスは私の性格をよく理解してくれている。  こうなったらもう止められないって。 「わかりました。俺が見た最後のフランシス家についてお話をします」  そう言ってレオは、彼の知る限り話をしてくれた。  あの後、私が死んでしまったという理由でハワード家との領地交渉はなくなり、お父様は大きな事業に失敗した。  かなりの損失、財産も半分以下にまで減った。一度立ち直すために詳しい収支会計を出したが全く合わず、調べたら義母と義姉が勝手にお金を使っていたことがわかって――。  さすがのお父様も失望したらしい。  義母も義姉も結局は行く当てもなく、お父様も今はイザベラお母様とナタリーお姉さましか心の支えがいないから、三人で再建を願い、今は慎ましい生活を送っているみたい。  フランシス家の財政が悪くなって賃金が下がったことにより、使用人たちも自主退職。レオも義母から自然と逃れることができ、今は――。 「今はクリスさんのおかげでクラーク家に勤めています。もちろんクラーク家の皆さんもクリスさんが亡くなったと思っていますが、クリスさんの指示通り事情を話したら快く受け容れてくださいました。優しい方たちで、エマ様とはお会いしたことがありませんが、皆さんみたいに温かく優しい方だったんだなって想像ができます」  心は複雑だった。  たくさんの人に迷惑をかけてしまったから。
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