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母が私にいつもより、上品に説明をし始める。
「こちらの城戸様の御子息が、独身で恋人もいないから心配なさってて。
城戸様が叔父さんのお店で紫を見かけて、是非ともお見合いをって望まれて。
紫に、今日来てもらったのよ。」
「私?」
「そうよ。」
目の前にいるのに、絶対イヤとは言えない状況。
確かに叔父さんとこは息子2人だから、お店で会ったのは確実に自分に違いない。
(叔父さんのお店で会ったことあるんだ。
全然、覚えてない。)
城戸が私に声を掛けてきた。
「紫さん、今日は来て頂いてありがとう。
息子に、何とかお見合いをして結婚をって考えたの。今まで何人もお見合いをさせてきたけれど、断ってばかりで。
そんな時にあなたをお見かけして、是非とも息子に会って欲しくて無理を言ったのよ。
息子には食事をしたいって、呼び出したの。」
「お医者様なら、お忙しいのでしょう。
恋人だって作る暇も無いのかもしれませんよ。
ねぇ、紫?」
母は興奮気味で私に同意を求める。
母の目の奥は余計なことを言うなと、語っているようで少し怖い。
突然、城戸が携帯を手にして立ち上がった。
「噂をすれば…。
聡司、こっちよ!」
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