54人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
若紫
彼は自分の事を話してくれた。
聡司の父は城戸総合病院の院長。聡司は次男で、兄はすでに結婚。仕事と家の往復で、女性の影が無さすぎて興味がないのではと思われ、お見合いに至ったそう。
一見、眼鏡のせいか冷たそうに見えるが、話しやすい人だった。何より私の話を馬鹿にするのでもなく、ちゃんと聞いてくれた。
ドキドキが止まらない私は、彼に出会えただけで嬉しかった。
私は人見知りでお喋りが得意ではないのに、彼とは年齢差を感じる事なく話が自然と合った。
高校生の私に合わせてるのかも、しれないけれど。
「紫さんと、こんなに話が合うと思わなかった。」
食事をゆっくり終えた私達は、コーヒーを飲みながら話をしていた。
「紫さんの名前は、紫と書いて『ゆかり』と読むんだね。
若紫の様であなたのイメージそのままだ。」
「若紫ですか!?そんな事ないです。
でも源氏物語が好きなので、そう言って頂けて嬉しいです。」
「紫さんもなんだね?
実は私も源氏物語が好きです。男のくせに可笑しいですよね?」
「いいえ、男のくせにとは思いません。
城戸さんが、源氏物語好きとは意外です。」
「男で源氏物語が好きなんて、結構恥ずかしいいんですよ?
ところで紫さんは、源氏物語の中で好きな和歌はありますか?」
最初のコメントを投稿しよう!