若紫

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若紫

彼は自分の事を話してくれた。 聡司の父は城戸総合病院の院長。聡司は次男で、兄はすでに結婚。仕事と家の往復で、女性の影が無さすぎて興味がないのではと思われ、お見合いに至ったそう。 一見、眼鏡のせいか冷たそうに見えるが、話しやすい人だった。何より私の話を馬鹿にするのでもなく、ちゃんと聞いてくれた。 ドキドキが止まらない私は、彼に出会えただけで嬉しかった。 私は人見知りでお喋りが得意ではないのに、彼とは年齢差を感じる事なく話が自然と合った。 高校生の私に合わせてるのかも、しれないけれど。 「(ゆかり)さんと、こんなに話が合うと思わなかった。」 食事をゆっくり終えた私達は、コーヒーを飲みながら話をしていた。 「(ゆかり)さんの名前は、(むらさき)と書いて『ゆかり』と読むんだね。 若紫の様であなたのイメージそのままだ。」 「若紫ですか!?そんな事ないです。 でも源氏物語が好きなので、そう言って頂けて嬉しいです。」 「(ゆかり)さんもなんだね? 実は私も源氏物語が好きです。男のくせに可笑しいですよね?」 「いいえ、男のくせにとは思いません。 城戸さんが、源氏物語好きとは意外です。」 「男で源氏物語が好きなんて、結構恥ずかしいいんですよ? ところで(ゆかり)さんは、源氏物語の中で好きな和歌はありますか?」
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