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お見合い
都内、某ホテル。
4月で高校3年生になった伊藤紫は、母に呼び出されていた。ホテル内を見回して、母を探す。
(学校終わりに来いなんて。どこいるのよ〜。)
学校の制服を着てホテルっていうのは、ちょっと来づらい。
早く母を見つけたくて、携帯電話で呼び出した。
「もしもし、お母さん。どこいるの?」
「紫、ここよ!ラウンジでお茶してるの。
早く来て。」
ラウンジに目を向けると、珍しく着物を着ている母が手を振っている。
(何で着物?珍しいなぁ。)
母のもとへ行くと、母の向かいには母より少し歳が上と思われる女性が座っていた。
母は隣に座るように促した。
「こちら叔父さんのお客様で、城戸様よ。」
「はじめまして、伊藤紫です。」
「城戸さゆみです。
今日はよろしくお願いしますね。」
私は挨拶をしつつ、母の隣に座った。
私の叔父であり母の兄は、都内で老舗の小原呉服店を営んでいる。
母は老舗の呉服屋の娘であるにも関わらず、あまり着物を着ない。
そんな母が着物を着ているという事は、叔父にとって城戸と名乗る女性は大事なお客様なのだろう。
私は普通のサラリーマン家庭に育ったせいか、叔父さんの大変さはあまりわかってない。
叔父さんの仕事に無関係な私に、大事なお客様と同席させるとは一体どういう事なんだろう。
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