それから

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それから

 眠るあなたの傍らで、わたしはたくさんの思い出を振り返る。    みんなに祝ってもらった結婚式。『とてもきれいだった』と、何度も繰り返して言ってくれたね。照れくさかったから、冗談めかして『きれいなのはあの日だけ?』とわたしが言うと、笑って耳元で『今もずっと君はきれいだよ』と言ってくれた。そんなやり取りが本当に嬉しくて好きだった。    ふたりで色んなところに出掛けたこと。どこに行っても楽しかったけれど、部屋にふたりでいる穏やかな時間も幸せだったよね。    やがてふたりが3人に、そして4人の家族になって、そんな穏やかな時間はなくなっていった。あなたは仕事が忙しくて、わたしは育児に必死で。わたしたちは穏やかに、(ゆる)やかに、すれ違っていった。    以前は何でも話してくれていたのに、わたしの知らないあなたが増えていく。仕事は楽しい? 今日はどんなことをしたの? 聞く暇すらなく、一日が終わっていく。  だけどわたしも同じかな。話すことといったら子供たちのことばかり。『今日わたしね、髪を切ったんだよ』。そんなことも話さなくなっていった。もし言っていたら、何かが変わっていたかしら。『似合うよ』って誉めてくれた?    そんなこと、もう分からないよね。
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