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愛する人が他にいるのに、共に生きていくことはできなかった。
結局、私達は離婚にむけて話し合い、私が慰謝料をもらって、夫が一緒に暮らしていたアパートを出て行くことになったのだ。
離婚が決まっても、しばらく一緒に暮らしていたから、夫が今朝、この部屋を出ていったとは、とても思えないのだ。
『すまない、花穂』
それが、この部屋を出て行く時の夫の言葉だった。
今頃、昔の恋人と語り合っているのかもしれない。
それに対して、私は一人残された部屋で、ジャムの瓶を前に途方にくれている。
「全部持って行ってくれれば良かったのに」
私は、知らず、そう呟いた。
冷蔵庫の中にあるのは、夫が好きなものばかりだ。
離婚が決まっても、私は旦那の好みの料理を作ってしまっていたのだ。
だけど、夫はこの部屋を出て、私は一人になった。
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