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プロローグ
木々が鬱蒼と生い茂る森を白い獣にまたがり、私は隣の領地との境界線へと向かう。
情報によると、今日はそこに目当ての人物がいるはずなのだ。
この薄暗い森には魔獣が至るところにいるけれど、駆け抜ける私たちを止めるものはいない。皆、私たちを避けてひっそりと息を潜めている。
言いつけを守って良い子たちね、と私は胸の内で思いながら、自分を乗せ風を切って走る獣にしっかりとしがみついた。
しばらく進み森を抜けたところに、ひとりの青年が立っている。
あれが目当ての人物だ。辺りを見渡しても他に人はいない。狩りの最終日だと聞いていたけれど、他の人はどこへ行ったのだろう。でも丁度良い。
何日にも及ぶ狩りで身支度を整える暇もないのか、パッと見るとどこの山男だという風貌で得体が知れない。でも私はこの姿しか知らないので、この姿で安心した。
私が地面に降り立った音を聞いてこちらに視線を向けた青年は、驚きで目を丸くしすぐに剣を構える。
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