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「それよりも、先に謝るべきだったのは俺の方だ。ほとんど会ったことがないとはいえ、馬鹿な従兄弟が申し訳なかった。あれはあなたを何度も傷つけただろう」 「傷つかなかったと言えば嘘になりますけれど、最後の方は諦めていましたし早々に見限ってしまいましたから」  でも昔は優しかったんですよ、と笑えばヴィルヘルム様は複雑そうな顔で私の顔を覗き込んでくる。ヴィルヘルム様の顔は端正で堀が深くて格好良いなあと思っていると、いつのまにか至近距離にあって私は目を瞬かせる。近い、近い。 「本当に気にしては……」 「いません。だって、あの、昨日も言った通りとても恥ずかしいんですけれど……私の初恋はヴィルヘルム様なので。初恋の方と結ばれるなんてまるで小説のようですよね」  この世界での初恋は嘘じゃないし。前世から好きだけれど、この世界に来てもずっと好きだったし。  自分にそう言い訳をする。  顔に集まった熱を散らすように、羽根の付いた扇で扇いでいると愉快そうに笑っているヴィルヘルム様が目の端に映った。昨日は私の告白を受けて耳まで真っ赤にしていたのに。
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