春休み自由作文「ジューン・ブライドの歴史」 

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春休み自由作文「ジューン・ブライドの歴史」 

春休み自由作文「ジューン・ブライドの歴史」  1ねん2くみ よしわら たいち  ジューンブライドという言葉を聞いたことはあるが、しかし(よう)として言葉の意味は理解していない。そんな曖昧模糊な所感をお持ちの方は少なくないのではなかろうか。  そもジューンブライドに限らず、なんとなくでしか言葉の意味を理解していないというのは我ら人間にとってはあるある話のようなものだ。故に僕はジューンブライドへの探求心を持つ読者が多少なりとも存在するという想定で、以下にジューンブライドの背景、あるいは歴史等の概説を示すことにした。僕自身も多少は婚姻の知識を有しているので、以下に論じる説の信憑性は保証されていると思っていただいて結構である。(※1)  しかしながら僕個人の結婚願望、ないし好みのタイプ等に関する問い合わせは一切を棄却する。仮に問い合わせがあろうものなら、ママに頼んで名誉棄損罪から訴訟沙汰にするのもやぶさかではないので注意されたし。  さて、前置きはこの辺りで済ませて、そろそろジューンブライド講座を始めるとしよう。耳の穴をかっぽじって読んでも意味はないため、両の目を見開いて刮目すること。  まずはジューンブライドを言葉の構造という観点から解説。見ての通りジューンブライドとは、「ジューン (六月)」「ブライド(花嫁)」という二つの英単語から構成されている言葉であり、文字通り六月の結婚を表すワードになっている。ここまでは諸君も理解に及んでいることだろう。  しかしながらジューンにはジューンの歴史が、ブライドにはブライドの歴史が存在する。(※2)その事実を認知している者は多くないのではなかろうか。  以上の背景から、ここからはジューンなる言葉が誕生した歴史、そして同じくブライドが誕生した歴史について解説していくものとする。  まずはジューン (六月)が言葉として普及された歴史について。時は遡ること七〇〇年代、日の本が奈良時代であった頃の話である。(※3)  今となっては英語といえばアメリカの言葉であると思われがちだが、英の語と書いているように、言語発祥の地はイギリスである。ジューンも例外ではなくイギリス発祥の言葉であり、一般的に使われ始めたのは七三四年からであったそうな。(※4)  当時、言語としての体系を確立していた英語ではあるが、唯一の欠点として一から十二の月を表す単語が存在しないという大きな問題があった。(※5)当時は一月を「ワン・ムーン」、二月を「ツー・ムーン」と呼称していたという記録が大英博物館内の書物に記載されていることからも、この説の信憑性を疑う余地はなかろう。(※6)  以上の重大な欠点を看過できずに立ち上がったのが、七三四年当時に言語学者であったジューン・ミカエルである。(※7)「日常的に使う十二の月に言語が定義されていないのはおかしい」と提唱した彼は新たな単語を十二個作りあげ、十二ある月にそれぞれ結び付けたのだ。(※8)  察している方も居られるかもしれないが、六月のジューンは「ジューン・ミカエル」から引用されたのである。(※9)言語学者の中心となって立ち上がった彼は十二の月の真ん中、すなわち六つめの月の名を冠するべきだという学者の声が多く、彼は没後から現在に至るまで六月の象徴として、その名を呼ばれ続けているのだ。(※10)  以上はジューン産みの親にして英語界の革命児、ジューン・ミカエルの功績であった。(※11)さて、続いてはブライド(花嫁)についても同様に歴史的観点から話を進めていくとしよう。  ブライドはジューンより百年ほど先輩にあたる単語だ。(※12)これも先ほどと同様に六〇〇年代、ある人物が声を挙げたことから普及した言葉である。(※13)  しかしジューンの場合とは異なり、ブライドは人物名がそっくりそのまま引用されたかと聞かれれば、それは事実と反する。(※14)前述したようにジューンにはジューンの歴史があり、ブライドにはブライドの歴史があるのだ。(※15)言葉も我々人類と同じように皆違う出自を持つため、その点は十二分に注意すること。(※16)もし諸君が言葉を冒涜する真似をしようものなら、僕が言語の代行者として鉄槌を下すので覚悟するように。  さて、話は戻ってブライドの歴史について解説だ。ブライドという言葉が誕生したのは六二三年、これも当時言語学者であったアロンゾ・ミカエルの提唱からである。(※17)  加えて、ここで一つ注釈。アロンゾ・ミカエルは先ほど登場したジューン・ミカエルと同様にミカエルというセカンドネームを持っているが、彼らに血縁関係は一切無いので念頭に置いておくこと。(※18)同じミカエルでもアロンゾ・ミカエルとジューン・ミカエルでは性別も違えば、提唱論も違うのである。(※19)  アロンゾ・ミカエルは六〇〇年代においては珍しい女性の言語学者であった。(※20)故に彼女は言語の中でも特に女性に関する言葉の調査を行い、ブライドという単語を広めるに至ったのである。(※21)  では、なぜブライドが花嫁を表す単語になったのだろうか。より詳細に追及していくとしよう。  六〇〇年代において、花嫁を表す英単語は「ワーム」であった。(※22)夫との幸せな結婚生活をワームライフとも呼び、当時の英国人男性は違和感なくワームを使用していたという記録が彼女の著書「worm to bride」にも記されている。(※23)  しかしながら、英国人女性は当時のワームという言葉の響きに違和感を覚えていた。(※24)  それもそのはず。ワームという言葉は現代の日本語に訳すと虫なのである。  花嫁という祝福されるべき立場であるに関わらず、同語意義として虫という意味を持つのはいかがなものだろうか。(※25)もっと別の単語に置き換えられないだろうか。(※26)  私たち女性にも「プライド」というものがあるのだから。  ……と、そのように考えたアロンゾ・ミカエルは、プライド(誇り)の始音を濁音させてブライド(花嫁)を新たな単語として定義し、広く普及させるまでに至ったのである。(※27)  以上、ここまでがジューン・ブライドの歴史概論である。駄文粗文が大いに見られたであろうが、読破して頂いた諸君には恐悦至極の心持ちだ。僕自身もこれから小学一年生として()の言語学者たちのように勉学に励むことを誓い、結びの言葉とさせていただく。 ※1~27:これらの歴史は全て作文提出期限前日の4月1日、すなわちエイプリルフールに僕が大慌てで書いたものであることに注意されたし。
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