(番外)ミカドゲーム

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 興奮のせいで羽多野も暑さを感じはじめていた。シャツを脱ぎ捨て、ここからどう進めようかといったん動きを止める。栄の目に悲壮が混ざりはじめるのが可愛くて、ぞくぞくと湧き上がる欲情には他分に嗜虐心が混ざっている。 「苦しそうだな。楽にしてやろうか」  もう少しだけいじめてみたい。羽多野は裸の腕を伸ばして栄の履いているボトムの前を開く。勃起を包み込んだ下着が盛り上がっているのが実に卑猥で、浮き出た茎を指先でつうっとなぞった。  前開きであれば、窓から勃起した勃起だけを露出させても面白かっただろうが、残念ながら栄は前閉じの下着を好む。  羽多野がいくら勧めてもセクシーな下着を身につけてはくれないが、響にくさと通気性の良さをアピールしたところ最近では機能性繊維を使った薄手のボクサーブリーフを使ってくれるようになった。  使用感が良いものなので純粋な善意も三割くらいはあるが、羽多野の考えることなので七割は欲望。形こそ普通のボクサーだが、圧倒的に薄手なので性器も尻も形がくっきりと浮き上がる。  腰を押さえつけながら、顔を股間に近づけて布越しにまじまじと勃起を観察する。 「羽多野さんっ!」  譲歩しているにも関わらず増長し続ける羽多野に、栄が切実な声を上げる。だが、これは恋人同士の大切なコミュニケーションであると同時に、お仕置きでもある。多少の屈辱は味わってもらわなければならない。  昼の光の中、羽多野の舐めるような視線に晒されて栄は羞恥に身悶え、勃起をますます硬くする。 「昨晩はさっさと寝たというのは、嘘じゃないみたいだな」  たっぷりとした根元の膨らみも、視線に耐えきれず簡単に濡れはじめる先端も、少なくともここ数日は射精していないことを告白している。  吐く息が触れる近さまで唇を勃起に近づけたところで、ふっと小さな声が聞こえる。 「——あなたは?」  高まる熱に我を忘れる前の、正気の元でこぼれた問いかけ。  きっと昨晩、寝室が閉じていることに落胆して、逡巡しつつもドアノブに手をかけることができず、一人で欲望を散らすこともできず眠ってしまった栄もまた、羽多野の本音を知りたがっているのだ。 「俺は、なかなか眠れなかったよ。君をひん剥いて泣かせるところを想像して悶々としてた。でも」  と、そこで栄の太ももに自らの股間を擦り付けて、熱さと硬さを知らしめる。 「我慢しておいて良かった。やっぱり自分の右手よりは、君の方がずっといい」
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