(番外)ミカドゲーム

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「でも、この間ソーホーの店で見たんだよな、ここに入れるやつ。カテーテルより細くて、全然痛くないんだってさ」  尿道に差し込む玩具というのは羽多野から見ても難易度が高そうで、さすがに手を出す気にはなれない。  とはいえ細い物から驚くほど太い物まで、シンプルなものから凝った装飾のものまで、シリコン製や金属製の繊細に作られたプジーの数々は羽多野の興味をそそった。スワロフスキーで飾られたリングのついた商品など、栄の形の良い屹立に挿したらさぞかし映えるだろうと想像する程度には——。 「また行ったんですか? そういう店に出入りするのやめろって言ったのに」  そう言いつつ栄はきっと、羽多野が過去に手に入れてきた玩具を使われた屈辱を思い出しているのだろう。怪しげな小瓶入りドリンクや、中の状態が透けて見えるシリコン製のオナホール。どれも確かに楽しかった。  過去の栄の痴態の数々を思い出していよいよ昂ぶってきた羽多野は、濡れた手を恋人の尻の狭間に滑り込ませる。  男の味を覚えたそこは、ひくひくと震えてたいした抵抗もなしに指先を受け入れた。  セックスも緩急が大事。さんざん焦らした後は一気にペースを速める。第二関節まで一気に指先を進めると、つるりとしたしこり部分をぐっと押した。 「ああっ」  指が入ってくるなり前立腺を抉られて。栄の体は飛び跳ねる。ほら、こっちだけでもこんなにいいんだから、前からだってきっと。 「尿道の奥までプジーを入れたら、これ、直接いじれるらしい」 「嫌、やだって。あっ、ああ……っ」  いきなり追い上げられて、栄は嬌声を上げながら羽多野の背中に爪を立てる。  尻側から、腸壁経由で押してやるだけでこんなにも乱れるのだから、前立腺を直接弄ったらどんな風になるだろう。興味はあるが、道具経由というのが気に入らない。  少し前ののときも、ジェレミーが栄に渡した忌々しいディルドは使うことなく捨て去った。他人から贈られたものだから、というのも理由のひとつだが、あのとき羽多野は思った。  自分以外の何かが——たとえそれが無機物であろうが——栄の中に入るのは、面白くない。尻の穴だろうと、性器にあいた小さな穴の中だろうとそれは同じことだ。
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