約束の場所

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約束の場所

ー月光祭り当日ー 「わぁ〜、よく寝た〜。」 ヒナトは朝ご飯を食べに、1階に降りた。 「母さん、朝ご飯まだ〜?」 「あらヒナト、早いのね?」 「当たり前じゃん!今日は月光祭りだからだね。」 ヒナトは鼻声で言った。 「あら、風邪?熱あるんじゃないの?」 母さんは、おでこを触った。 「あら、熱いじゃないの!!ほら、体温計!」 「大丈夫だよ!!」 「いいから!測りなさい。」 「分かったよ!」 ヒナトは熱を測った。 (まぁ、ないと思うからいいや。) ピッピッピと音が鳴った。 (まぁ、36.8度ぐらいだろ。) ヒナトは体温計を確認した。 (・・・38度!!!どうしよう・・・。) ヒナトは、体温計に息を吹きかけて、体温を下げようとした。しかし、そんなことをやっても温度は下がることはなかった・・・。 「ヒナト、何度だった?」 ご飯を作っていたお母さんが問いかけた。 「ちょっと何か、エラーになっちゃって・・・。」 ヒナトは、エラーになったと誤魔化して、測り直した。 ピッピッピと音が鳴った。 (今度こそは、36.8度ぐらいだろ。) ヒナトは体温計を確認した。 (えええ!!38.2度って、さっきより2度上がってる!!) 「で?何度だった?」 「えーっと、それは・・・。」 「いいから!見せなさい!」 母さんは、ヒナトから体温計を取った。 「あらやだ、38.2度もあるじゃない!今夜の月光祭りは行けないわね。」 「そんな~、嫌だよ!!」 「何言ってるの?!みんなにうつしたらどうすんの・・・?とにかく行かないで、大人しく寝とくのよ!」 「分かったよ!」 ヒナトは部屋に行った。 (もしかして、俺が行けなかったのって熱が出たからだったのか!!これじゃ何も変わらないじゃんかよ・・・。例え夢だとしてもカリナやみんなを助けたい!何より、信じてくれたカルマたちと行くって、約束したからな。) いろんな思いが頭の中に浮かんでくる・・・。その時、スマホが鳴った。 「もしもし?ヒナト。」 カリナからだった。 「どうした?」 「一緒に行かない?」 「ごめん!ちょっと遅れると思うから、さっきに行っといて。」 「・・・。」 「大丈夫って!必ず来るから!」 「約束だからね?」 「あぁ、約束だ・・・。」 ヒナトは電話を切った。時間は、どんどん過ぎていく・・・。 ー18時ー (あと30分か~。) 「ヒナト、買い物に行ってくるけど、祭りに行かないでね?」 「分かってるって!行かないよ!」 「じゃ、行ってきます。」 母さんは買い物に行った。 ー10分後ー (これは、チャンス!) ヒナトは、急いでチャリで祭り会場まで向かった。 (間に合うかな~。) ヒナトは自転車をこいだ。時間もどんどん過ぎていく・・・。 (あと5分か・・・。) ー一方その頃ー 「ヒナトの奴、遅いな〜。」 「ワンチャン、来ないとか?ww」 「それなww」 カルマとシュンは笑った。 「2人とも、まだそんなこと言ってるの?ヒナトは絶対来るよ!」 (ね、ヒナト絶対来るよね。だって約束したんだもんね。) カリナは、空の満月を見た。 「カリナちゃん、冗談だよ〜。」 ー待つこと5分後ー 「あ、ヒナトだ!」  チャリを必死に漕ぐヒナトが見えた。 「遅いぞ、ヒナト!」 「すまん!!」 ヒナトたちは、早速声かけをした。 だがしかし、誰も聞く耳をもってくれなかった。人もどんどん増えていく・・・。 「やっぱり、無理か・・・。」 ヒナトとカリナ以外は、諦めモードに入っていた。 「みんな諦めるなよ。」 「そうだよ!もう少し頑張ろうよ!」 「カリナちゃん、無理だよ。だって・・・。」 カルマは、多くの人々で賑わう会場を指さした。 「俺たちが言ったところで無理があると思う。」 「やっぱり無理があるよな〜。月光山も噴火する気配もないし・・・。」 最初に信じていたアキトたちも、諦めモードに入っていた。 そして遂に、月光祭りが始まった。 「クソ!」 ヒナトは、走って何処かに行った。 「ヒナト!!待って!」 カリナは後を追った。 「ヒナト、ここって・・・。」 「そうだよ。」 ヒナトが向かったところは、町内会だった。 「すみません!!」 ヒナトたちは、扉をドンドンと叩いた。 「なんの用かねぇ?」 「今すぐ、祭りを中止してください!」 「なぜ、中止しないといけないのかねぇ?」 「それは、もうすぐ月光山が噴火するから。だから早く・・・。」 「ハハハ、坊主漫画の見過ぎだぞ!ほら祭りを楽しんでこい!」 「嘘じゃないんです!信じてください!お願いします!」 カリナは、頭を下げ必死にお願いした。 「カリナ・・・。」 そんなカリナを見たヒナトも、一緒に頭を下げた。 「ん〜、そう言われてもね〜。噴火する様子も無いしね〜。」 会長は頭をかいた。 「お願いします!」 2人は、頭を下げ続けた。 (やっぱ、無理なのか・・・。神様お願いします。みんなを助けたいんです・・・。) ヒナトは、諦めかけていたその時!! 「会長〜!」 副会長が、慌てて走って来た。 「どうしたんだね?そんな慌てて。」 「それが・・・。」 副会長は、会長の耳元に小声で話した。それを聞いた会長は、ヒナトに言った。 「君、どうやら本当みたいだね?」 「信じてくれるんですか?!」 「あぁ。」 「ありがとうございます。」 なんと、会長が信じてくれたのだ。それには理由がある。 「それが会長、国から月光山が噴火しそうと、連絡がありまして・・・。」 「何!!それは本当かね?!」 「はい・・・。」 ということがあり、会長はヒナトのことを信じたのだ。 「でも、何処に避難させるんですか?」 カリナは会長に聞いた。 「ん〜。」 会長は悩んだ。そこで、ヒナトが提案した。 「隣町の高台に逃げるのはどうですか?」 「それは良いアイディアだ!」 ー19時30分ー 会長は避難警告をアナウンスした。 「今さっき、国から月光山が噴火すると避難勧告命令が出されました。みなさん、落ち着いて、隣町の高台に慌てず避難してください。」 祭り会場は、大パニックになった。ヒナトたちも避難した。 ー20時25分ー 避難場所の高台まで、もう少しの時に月光山は噴火を始めた。ヒナトたちと人々は、急いで高台に登った。鶴亀市は、一瞬でマグマに覆われ火の海となった・・・。 「でも、犠牲者がよかったね!もし、あそこに居たら助からなかったかもしれない。これもヒナトのおかげだよ!ありがとう。」 「カリナ・・・。」 ヒナトは照れた、次の瞬間!! 「うっ・・・!」 ヒナトは胸を抑えながら、その場に倒れた・・・。 「ヒナト?ヒナト!!」 みんなの叫び声が、だんだんと遠ざかっていく・・・。 ー現在ー 「んー、ここは何処だ?病院・・・?」 「ヒナト!!やっと目を覚ましたのね!よかった!!」 「ん、誰だ?」 ヒナトは上を見上げた。そこには、大人になったカリナの姿があった。 「ちょっと、待っててね!先生呼んでくる。」 先生は診察をした。 「これなら大丈夫ですよ。明日には退院できますよ。」 「本当ですか?!ありがとうございます!」 カリナがお礼を言うと、先生は病室を後にした。 「あんた、カリナちゃんに感謝しなさい〜。」 「え?」 「あんたが会社で熱中症で倒れて、カリナちゃんが会社を休んで看病してたんだから。」 「ちょと待って!どういうこと?俺が会社勤め?」 「あんた何言ってるの?」 詳しく話しを聞くと、俺はカリナと結婚していて、俺はITの会社に勤めているそうだ。そこで重度の熱中症で倒れ、カリナが看病したそうだ。 「カリナ、ありがとうな。」 「もう、しっかりしてよね!お父さん。」 「お父さんって・・・?」 「もうすぐで産まれるんだ!男の子だって。」 「まじか!!早く名前も決めないとな!」 「そうね。フフフ。」 病室に笑いが広がった。 (それにしても、本当に変えられるんだな。)                   完
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