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思わぬところで通じ合ってしまった私たち。その事実がとてつもなく愛おしく感じてしまった。
すっかり気持ちが晴れやかになった私は彼の腕に絡みついた。
「え」
「嫌?恥ずかしい?」
「……暗いからいいよ」
「ふふっ」
「また笑った」
「だって……私も一緒だったから」
「何が」
「私も朔太郎に早く逢いたいって思っていた」
「!」
「だからね、同じだなー嬉しいなーってつい笑っちゃったの」
「……そっか」
先刻まで少し剣呑な雰囲気を纏っていた彼はすっかり柔らかくなっていた。そうして私にされるがまま黙って腕組みされていた。
暗い夜道も彼と一緒なら何も怖くない。寧ろ何ともいえない多幸感を覚える。
(つまりこういうことが幸せってことでしょう?)
妙に納得してしまった私は数週間前に寄った占い師がいるお店を横目で見つつ通り過ぎた。他の人を占っていて私の方を見向きもしなかったけれど私はその占い師に向かって勝手に心の中で宣言した。
(私の結婚相手は運命の人じゃない。だけどそれでいいんです!)と。
運命の人と結婚出来なくたって何も問題はないのだと私はこれからの長い人生をかけて証明して行くと誓ったのだった。
(終)
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