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交際を始めてから三年。その間に私も朔太郎も大学を卒業して今では一緒に暮らして一年ほどが経とうとしている。
一応結婚前提でのお試し同棲という感じだけれど今のところ特に目立った不満はない。最後まで交際するかどうかを迷った理由に対しては今のところ特に実感や痛感したことはない。
(そりゃ怒れることだって不満に思うことだって沢山あったけど)
そのどれもが差して気になるほどのものではなかった。勿論別れたいと思ったことも一度もなかった。だからすっかり相性最低なんて些末なことは忘れていたのだけれど……。
「おかえり、早かったね」
「……ただいま」
考え事をしながら歩いていたらいつの間に自宅まで辿り着いていた。出迎えたのは勿論同棲している彼氏の朔太郎だ。
「飲み会、愉しかった?」
「あー……まぁまぁ、かな」
部屋着に着替えながら朔太郎の問いかけに応える。ふたりで結婚資金を貯めていることから住んでいる部屋は家賃7.4万円の1LDK。決して広いとはいえないけれどふたりで住む分には困っていない。やっぱり家賃折半というのは魅力的だ。
ただ部屋がひとつしかないのでプライバシー的なことを考える快適とは言い切れないのかもしれない。たまにはひとりになりたいなと思う時はあるのだから。でもそういうことにはそれなりに対処出来てしまうほどに私たちの付き合いは良好そのものだった。
(いや、待て)
良好とはいえそれって既になぁなぁの関係になってしまったということだろうか?──なんてことをぼんやりと考えていると急にノシッと体が重くなった。
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