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(参考程度、だけどね)
全てを鵜呑みにはしない。だって所詮占いだもの。全部が全部その通りになるわけがないのだから。
「あ、そういえば手紙来ていたよ」
すっかり機嫌をよくした彼が私宛の手紙を差し出した。
「ん、なんだろう」
白い封筒の後ろには見覚えのある名前が連名されていた。もしかして、と思いながら封を開けて中身を確認すると予想していたものが出て来た。
「それって結婚の招待状?」
私の横から開封の義を眺めていた彼が興味深げに呟いた。
「そう、大学のゼミ仲間のふたり。ずっと付き合っていたけどやっと結婚するみたい」
「へぇ」
彼には面識のない友人の結婚式に招待された。大学卒業から二年。こんな便りが届くような歳になったんだなと感慨深く思った。
(っていうか私だって結婚考えているのにね)
そんなことを思いながら彼の顔をチラッと見るとバッチリと目が合った。すると彼はにっこりと笑った。一瞬その笑みは何?と不思議に思った。
「ボーナス出た後でよかったね」
「へ?」
「ご祝儀。それなりに弾まないとなんでしょ?」
「…あ、あぁ、そうだね。他にも着て行く服とか靴とか揃えなきゃ」
「じゃあ今度の休みは一緒に買いに行こうか。俺、見立ててあげる」
「朔太郎ってそっち方面詳しいの?」
「詳しくはない。だけど俺が音葉に着てもらいたいものを選ぶのには自信がある」
「何よそれ」
相変わらずおかしなことを言うなと思いながらも笑えた。本当は男の好みの服を着るよりも自分の好きな服を着たいし買いたい。
だけど不思議と彼が私に着せたい服とやらが気になって仕方がなかった。そういう意味でも一緒に出かけるのが愉しみだった。
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