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──そして迎えた友人の結婚式の当日。結局朔太郎が選んだラベンダー色のワンピースを身に纏い式場に入った。
「音葉ー久しぶりー」
「久しぶりだね、元気だった?」
懐かしい顔ぶれに出会えてちょっとした同窓会気分になった。卒業してお互い違った道を歩んでからは顔を合わせることは勿論、メールのやり取りも昔より頻繁ではなくなっていた。
「音葉は何処に勤めているんだっけ」
「ナギノクリーンカンパニーの事務」
「あーそうそう、清掃業界の大手だったわ」
「そういう香帆だって信金勤めでしょう?」
「あー言ってなかったっけ?辞めたんだよ、三ヶ月前に」
「え、そうなの?!」
「まぁ話せば長くなるんだけどさー」
知らなかった近況を話したり訊いたりしていると不意に「音葉ちゃん」と呼ばれた。声がした方に視線を向けると同時にドキッと胸が高鳴った。
「久しぶりだね」
「せ、先輩……」
私に声をかけて来たのは大学時代、私が運命の人だと信じて疑わなかったサークルの先輩だった。どうして此処にいるのだろうと思っていると
「新郎の三田は高校の時からの後輩でね、色々付き合いがあって式にも招待されたんだよ」
「そ…うなんですか」
(なんという偶然!)
勿論結婚式に参加しているのがゼミ仲間だけではないと知ってはいたけれどまさか此処に先輩がいるとは夢にも思わなかった。
密かにテンパっている私の元に近寄って来た先輩は耳元で囁いた。
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