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第1章 覚醒編(ショタ期)
そもそもオレがアレなのは、昔、年の離れたイトコのキイっちゃんにオイタをされたのがキッカケなんであって。
オヤジんちの本家の仙台のばーちゃんちに、正月で親戚が集まってたとき。まだオレがランドセルしょってた頃。
「キイっちゃんは、東京のワタクシリツのメーモンチューガッコーに通ってるシューサイ」なんだって、本家のおばさんたちが絶賛してて。
北関東の片隅に生息するイナカモノのコセガレには「ワタクシリツのメーモンチューガッコー」なるものは把握できなかったけど、「東京のシューサイ」というキーワードには、まばゆい尊敬と憧れをわきあがらせたもんである。
実際、その年の正月に初めて顔を合わした「東京のシューサイ」は、オレの生息地周辺のヘラヘラしたニキビヅラのチューガクセイどもとは一見して毛色の違う……親戚一同いわく「いかにも利発げ」な……シュッとした兄ちゃんだった。
ピンと背筋の伸びた綺麗な姿勢に、オレは、子供ながらにカリスマ的なオーラみたいのを感じちゃって。キイっちゃんがイトコ連中で一番の年上だったってゆうせいもあるけど、仙台んちにいる間中「キイっちゃん、キイっちゃん」っつって。キイっちゃんにくっつきまわってた、オレ。キイっちゃんのシッポにでもなったみたいに。
キイっちゃんは、面倒そうな顔もせずに、よくガキの相手をしてくれたもんだ。「東京のシューサイ」って、きっと基本はインドア属性なんだろうけど。だって、出がけにリュックにつめといたニンテンドーDSを東北道の車中でオフクロに見つかって没収されてたオレは、オヤジ推奨の、タコ上げだのベーゴマだの、昭和的スタンダードな正月用遊具で余暇に興じるしかなかったんだ。けど、古くさいアナログな遊びでも、キイっちゃんにつきあってもらうと、いちいち楽しくて。イカレたサルみたいにキャッキャはしゃぎながら、雪ん中を転げまわってた。
そんで、あの日は、朝から雪が降り始めたんで、さすがに外では遊べなくて。イトコ全員で、ウチん中で隠れんぼしよって。そんときもオレは「一緒に隠れるー!」って、キイっちゃんの手を離さなくて。オレと同い年の本家のマゴムスメが「セイちゃんばっかキイ兄ちゃんをヒトリジメして、ズルい!」ってホッペタを真っ赤にして怒った。オレは、逆に、「ヒトリジメ」ってゆう言い回しが、なんかミョーに嬉しくて。キイっちゃんの後ろに隠れて腰に抱きついて、顔だけのぞかせて「あかんべー」を返した。
キイっちゃんは「女の子には優しくしなきゃダメだよ」と、ちょっと眉をしかめて見せたけど。でも、後ろに手をまわしてオレの背中をなでてくれた。他のイトコたちには見えないようにコッソリなでられたことが、心臓がバクバクするくらい、いい気分だった。
オレは舞い上がってた。オレにとってキイっちゃんが「特別なイトコ」なのは間違いないけど、キイっちゃんにとってもオレは「特別なイトコ」なんだって思ったから。
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