始まりの始まりーーー☆

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始まりの始まりーーー☆

「ぷはっ。うんまっ!」 如月姫子、本名は田島篤子。 好きなものは、ピンクのユニコーンとふわふわルンルンなもの。嫌いなものは、マイノリティを嫌う人たち。 耳の高さで結ったツインテールをヘドバンしながら、私は勢いよくビールジョッキをカウンターに打ちつけた。 「姫子、そろそろやめときな」 隣で頬杖をつく奈央ちゃんが私を嗜める。 「あらあら。姫子ちゃん、今日はやけに荒れているじゃない?」 私たちの様子を黙って見ていたバーのママ、エル・ドメスタスがくすくす笑う。 エル・ドメスタスというのは本名ではない。本名は私にもわからない。 年齢も性別もよくわからないけれど、エルさんとはもう8年来の仲だ。 カウンターに埋まってしまいそうなほど大柄な体格が、妙に包容力を感じさせる。 「飲まないとやってられないの」 どこかで聞いたようなセリフで捲し立てて「おかわり!」とグラスを差し出した。 「また負けちゃったの?」 空のグラスに国土無双を注ぎながら、エルさんが私をチラリと見やった。 「そそそ。今年に入ってもう30連敗中」 ヒック、としゃくりを上げる私に代わって、奈央ちゃんが相槌を打つ。 奈央ちゃんはブルーのおかっぱ頭を指でいじりながら、つまんなそうな表情で続ける。 「しかも今日の合コンは、ちょっと荒れちゃってねー」 頬杖をついたままの奈央ちゃんに、エルさんは興味深そうに目を輝かせる。 「なにがあったの?」
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