推し

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「あー、もう! メインストーリー最高! ハルハルまじで可愛い!」    私はスマホを片手に握りしめながら、テーブルに突っ伏した。 「ホワイトデーイベントも良かったけど、やっぱりメインストーリがあってこそだもんね」    画面をタップすると、メインストーリーの第五章クリア報酬としてスチルが現れた。最後のシーン、デビューへの決意をあらたにする瞬間だ。ハルハルが天使のような笑顔でメンバーたちを励ましている。 「最初はちょっと頼りなくて、人前に出ただけで赤面しちゃうような子だったのに。ハルハルったら、いつの間に成長したの。ますます君を推すしかないじゃないか」    ハルハルこと華山(はなやま)ハルキくんは、スマホゲーム<目指せ!至高のアイドル>に出てくるメインキャラクターの内の一人だ。幼馴染のケイタたちと共に<シュペルブ>を結成し、他事務所のアイドルたちと競い合いながらトップアイドルを目指している。  ストーリーが面白いのはもちろん、次々に現れるアイドル候補たちは誰もが見目麗しくて、ユーザーを飽きさせない。    そんなたくさんいるキャラクターの中でも私が最も推しているのが、このハルハルだ。    運動神経抜群、高身長で明朗快活、笑顔が最高に可愛い犬系男子。しかし、極度のあがり症で赤面症、その上女性恐怖症という弱点があり、彼はこれを克服するためにアイドルになった。  現実にこんな人間がいたら胸やけしそうなものだが、そこはやはり三次元、ハルハルの笑顔一つで全てが許される。 「もうこんな時間か。そろそろお風呂にはいらないと」    来月はゲームがリリースされてから6周年記念だから、絶対にイベントがあるはず。その時のために、気兼ねなくプレイできるように仕事頑張らないと。 私はスチルをスマホに保存し、風呂に入る準備を始めた。
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