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ハルハルと出会ったのは五年前。新卒として今の仕事に就いた頃だ。
私は介護老人保健施設という福祉施設の事務員として採用された。施設の母体である法人は県内では有名で、複数の総合病院や他の福祉施設を抱えている。勤務先の希望は特になかったが、人員の関係と新卒であるという理由で、病院よりも規模が小さい今の施設に配属された。
その年の新卒入社は私だけだったので、同期もおらず先輩ばかりの環境の中、自分なりに必死に頑張った。仕事が終わらないときは休日出勤をして、出来るだけ迷惑をかけないように努力した。
そうしているうちに、だんだんと仕事に行くのが憂鬱になり、せっかくの休みの日でも『二十四時間後には出勤準備をしているんだな』と考えるようになり、いつの間にか、毎日を生きるのが嫌になっていた。
そんなある日、特に目的もなくSNSを見ていると、<シュペルブ>という単語がトレンドに上がっていた。聞き馴染みのない言葉が気になり、投稿を見るとどうやら流行っているスマホゲームのことだと分かった。
<シュペルブ>について語っているファン人の情熱は凄まじく、私は少しだけそのゲームが気になり、プレイすることにした。
そこからは一瞬で。
キャラクターたちがトップアイドルになる目標に向かって、時には喧嘩し、ときには慰め合いながら、ひたむきに突き進む姿がそこにあった。
どのキャラクターも魅力的だったが、その中でも私の心を掴んだのはハルハルだった。辛い時でも天使のような笑顔を忘れない彼に、私は「生まれてきてくれてありがとう」と心の底から思った。
それ以来、私の生活は一変した。憂鬱な仕事もハルハルに課金するためだと考えれば頑張れるようになったし、次の日の仕事が嫌で楽しくなかった休日は、気兼ねなくハルハルを堪能できる貴重な時間になった。
ハルハルと私は生きる次元が違う。だけど、現実をより楽しく過ごせるようになったのは彼のお陰だ。
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