三次元

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 想像以上の驚きに直面したときの反応は人それぞれだと思う。  私の場合、今までにないくらい、たぶん人生で一番冷静になっていた。 「五百蔵さんですね。初めまして。私、事務の小森といいます」 「どうも」 「早速ですが、今日はどうやって出勤されましたか」 「バイクですけど」 「今後もバイク通勤をされる予定ですか」 「まあ、たぶん」 「バイクおよび車で通勤する方には申請書の提出をお願いしています。後ほど時間があるときで結構ですので書類を取りに来ていただけますか」 「はい」 「あと、更衣室の場所は分かりますか」 「えっと、二階の奥の部屋でしたっけ」 「エレベーター横の階段で上がっていただくのが分かりやすいと思います。あと、ロッカーの鍵は清掃チェックが終わってからお渡ししますので、申し訳ないのですが、それまでは荷物の管理はご自身でお願いします」 「はい」 「とりあえず、今の時点で私から案内することは以上です。何か分からないことはありますか」 「あの、制服ってあります?」 「ありますが。お持ちではないんですか?」 「前の病院でクリーニングに出したやつが返ってくるまえに、急に異動になったんで」 「分かりました。ちなみに身長は?」 「183センチです」 「でしたらLサイズで大丈夫ですね。制服の返却先は病院からうちの施設に変更しておきますので」    五百蔵さんは制服を受け取ると「どうも」とだけ言って去っていった。
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