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鏡の中のワタシ
「おーい!もう寝るから、布団!」
ユキオさんが居間で叫んでいる。私は後片付けの途中だったけれど、それを一旦置いといておいて、すぐに寝室に行き布団を敷いた。
シングルの布団を二つ並べて敷く。ユキオさんは寝相が悪いから、少し間を開けている。
居間に顔を出して
「お布団敷けましたよ。阪神はどうです?」
ユキオさんは短く角刈りに近い短髪で、家にいるときは、着古したTシャツを着ていた。野球を見るためだけの大きなブラウン管テレビで、ナイター中継を見ていた。
「今日はもうあかん。抑えのピッチャーがフォアボールばっかり出すから、勝てる試合も勝たれへん。もう気分悪いから、もう寝る」
「お布団敷いてますから。ゆっくりなさってください。もう机片付けますね」
ユキオさんは名残惜しそうに、コップの底に残った少しばかりの焼酎を飲み干して、何も言わず寝室に消えた。
「ふう…」
私は机に残った、煮魚、きゅうりの酢の物を台所に下げて、立ちながら残り物を食べた。ご飯が少し余った。どうしようか?食べる?おにぎりにして、ユキオさんのお弁当にする?
あんまり硬いご飯だと、ユキオさんは嫌がるだろう。私の朝ごはんで食べよう。
片付け物をして、お風呂に入る。すっかり遅くなった。見たいドラマもあるけれど、毎週見れないし、ドラマを録画してるとユキオさんが、露骨に嫌な顔をするので、こっそりとしか見られない。
「はあ…」
風呂に入りながら、ため息が出た。風呂から上がるときに、お湯を抜き掃除をしておく。そうしておくと、カビも生えにくいし、すぐにお風呂の用意ができる。
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