第一章 笑えや笑え

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「……ここでは、話せない」  御調は周囲を見回すと、突き当りの部屋に案内してくれた。 「この薔薇と茨は、覗き見る事を楽しむ場でもある。だから、隠れよう」  御調が案内してくれた部屋は、和室の部屋が連なったもので、横にトイレと小さなキッチンがついていた。更に、内庭のようなものがあり、そこに五右衛門風呂があった。 「露天の五右衛門風呂ですか……まるでホラーですね」 「いい作りだ!!」  誰の趣味なのか分からないが、五右衛門風呂が井戸のようで、とても怖い。しかも、和室から、その風呂が丸見えになっていた。  御調は畳に胡坐をかいて茶を入れると、付いてきていた雪谷に出していた。 「雪谷、ここで、シタイでしょう?」 「まあ、こういうのもいいね……露天でしたいね」  しかし、御調はタチに変更してしまったので、同じタチの雪谷とは、もう寝る事はないという。 「雪谷も、新しい恋人を作っていいよ」 「まあ、そうするよ。子供も欲しいし、結婚したい」  だが、今回、雪谷も呼び出したのは、仕事の依頼であったらしい。 「今回、呼び出したのは、新しい薔薇と茨の場所を教える為と、仕事の依頼だ」 「仕事ですか」  黒船に頼む仕事となると、人探しの依頼が多いのだが、普通のものがない。特にオカルト関係が多いので、あまり気乗りしない。 「探して欲しいコトがあってね」  御調は寛ぎながら説明を始め、俺に茶菓子を準備させた。更に、俺に肩揉みなどをさせると、満足そうに頷いた。 「肩揉み、上手いね」 「ありがとうございます」  肩揉みは、里子先でよくやっていたので、プロ級だ。更に俺は、全身マッサージも得意としている。だが、御調はやんわりと、俺を正面に移動させた。
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