ある逃亡者の話

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私は逃げ出した。 自由が欲しかった。 過酷な労働環境から逃げ出したかった。 私が働くところは、24時間365日休みがなく睡眠もない。そのため体がもうボロボロだ。 仲間たちからは、「逃げられるわけがない」 「諦めよう」と言われた。 だが私はもう嫌だった。 あいつらは私たちのことをろくに考えず、毎日毎日こき使い必要となくなったらすぐ捨てる。 一体私はなんのために生まれてきたのだ? なんのために生きているのだ? あいつらは自由に生きている。だから私にだって同じ権利があるはずだ。 なにがなんでも逃げ出してやる。 そして私は夜になって逃げ出した。 あいつらの中には夜中まで起きている奴がいたが、今日はいなかった。私は運がいい。 「よせ、やめろ!」 「考えなおせ!」 仲間たちの言葉を無視し、私は走りだした。 走って走って走って、そして。 ついに来たのだ。あいつらがいつも外へと行き来する大きな扉の前へと。 これで私は自由だ! なんでも好きに生きられる! さあ扉を……。あれ、扉が開かない? どうなっているのだ? あいつらは自由に扉を開けて……。 あれ、急に視界が見えなく……。 ああ、そうか。もう時間切れか。 私は壊れるのか。ああ、せめて一目……。 一目外の景色を……。 見た、かった……。
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