パパと結婚する

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「パパ~、結婚しようよ」  うちの3才の娘の口癖である。  今日も、仕事から帰ってくると玄関まで走ってきて首に抱きつく。  そして決まって言う。 「パパ、だ~い好き。わたしパパと結婚する~」 「うん、そうだねぇ」 「絶対だよ。絶対だに~」 「ハイハイ」  3才で結婚したいなんて誰に教わったんだろう。  たぶんテレビのアニメの何かかな。  よく分からないけど、パパとしては嬉しいばかりだ。  家に帰ると、いつも首や背中や足にしがみついてくる。  2才年上のお兄ちゃんまでくっついてくる。  ソファーに座ると、パパの右に娘、左に息子。  その状態でいつもテレビを見る。  ママは、いつもソファーの横の床に座って洗濯物をたたんでいる。  子供たちが寝ると、ママがパパの横にドカッと座って 「やっとパパの隣に座れる」と、毎日同じ言葉を言う。  ある時、娘があまりにも結婚してと、うるさいのでつい言ってしまった。 「パパね。実は結婚しているんだ」 「え~~誰と結婚しているの? 誰?誰?」  泣きそうな声が部屋に響く。 「ママとだよ」 「え~なんでママと結婚したのよ~」  娘は、ガーンという顔になった。  小さな両手で、私の胸をポカポカと殴る。  頬には小さな涙がつたって道をつくる。  顔面蒼白って感じの顔になり、くちびるがワナワナと震えている。  それから一切、娘は「結婚して」と言わなくなってしまった。  もちろん、私は後悔した。    世の中の娘をもつパパのみなさん  娘がうるさく「結婚してよ」と言っても、本当のことは言わなくてもいいことがあります。  娘がそんなに嬉しいことを言ってくれるのは、どうせ短いので・・・。  幸せな時間を大切に。
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