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「マジかよ」
宝物という言葉に興奮して剛が大きな声をあげたのを、郁斗は人差し指を口にあてて制した。
"誰かに聞かれたらマズい。静かに"
その文章を見た剛たちは三人は、確かにそうだと思い小さく頷いた。そして、郁斗を先頭に注連縄を潜り、洞穴の中に入っていった。宝物というワードと郁斗が洞穴に入っても無事だった安心感からか、洞穴に入ることへの恐怖心は微塵もなくなっていた。
「なぁ、宝物見つけたらどうする?」
「そんなもん、俺たち三人で山分けだろ。郁斗にやる義理はねぇよ」
「だよね、俺たち金持ちになれるね」
郁斗に聞こえないように、声を潜めて三人が悪巧みをしている。そんな様子に郁斗は何も気づかないようで、洞穴を奥に奥にと、進んでいった。
「なあ、郁斗の背中に蜘蛛の糸みたいなのついてるぜ」
「まあ、蜘蛛の巣くらいあるだろ」
「うわぁ、俺、蜘蛛苦手なんだよ」
「蜘蛛くらいでガタガタ言うなよ。宝物があるんだぜ。大人たちが立ち入り禁止にしていた理由もそれだよな」
「なんだろうね、宝物」
「ダイヤとか金じゃないか」
「しかし、まだ奥に行かないといけないのかよ」
「そうだな、結構奥まで歩いたぞ」
「おい郁斗、宝物はまだかよ」
剛が少し怒気を孕ませて郁斗に詰め寄ると、郁斗は右手ですぐ近くの窪みを指差した。
「何だよ、ちょうど着いたのか。そうならそうと言えよ」
そう言って、剛が郁斗の方に振り向くと、郁斗の足元から黒い何かがサーッと離れていった。
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