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ポーンポーンポーン
洞穴に向けて投げられたボールは何度か跳ねて、光の届かない場所に転がっていった。
「お父さんのボールが」
「ほら、早く探しに行かないと見つからなくなるぜ」
「「キャハハハハハハハハ」」
剛の言葉に、勝義と賢人が愉快そうに笑っている。この三人はいつも郁斗をからかったりして、いじめている。今日も三人にこの神社まで連れてこられて、いつも大切に持っていたお父さんの形見のボールを無理やり洞穴に投げ込まれたところだ。
学校の裏手にあるこの神社には、昔から立ち入り禁止の洞穴がある。その洞穴には普段、人が立ち入らないように注連縄が張られている。なぜ、その洞穴に入ってはいけないかは昔、村人を食べた化け物が住んでいるという伝承的なものとなっており、彼らの住むこの村では子供を怖がらせるためによく使われる話となっている。
三年前に交通事故で死んだお父さんと最後にキャッチボールをした思い出のボール。立ち入り禁止だとは分かっているけれど、あのボールを失くすわけにはいかないと、郁斗は恐る恐る注連縄を潜り洞穴に向かっていった。
「宝物でも見つけたらちゃんと言えよな」
「そうだ、ボールなんかより宝物探して来いよ」
「明日、学校で教えろよ」
三人は勝手な事を言いながら、洞穴に入っていった郁斗を置いて帰っていってしまった。
そして翌日……
郁斗が行方不明になったと村中が大騒ぎになった。
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