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剛達三人は、大人に怒られるのが怖くて、昨日の洞穴での一件を誰にも話さなかった。三人も意識的にその話を避けていた。
放課後になり、三人は昨日と同じように神社に来ていた。三人とも黙っていることに耐えきれなくなり、また郁斗の身に何か起こっているかも知れないという罪悪感からの行動だった。もしかしたら、神社か洞穴で寝てしまっているのではないか、という一縷の希望も持っていた。
「やっぱり、いないか」
「後はいるとすれば、洞穴の中だな」
「ええ、この中探しに行くのはやめようぜ」
郁斗を追い立てた時と、いざ自分たちが洞穴に入るのでは訳が違った。入ってはいけない、と言われている洞穴は、子供の目には地獄への入り口であるかのように不気味に口を開けていた。
「おい、勝義。お前ちょっと、様子見て来いよ」
剛が勝義の背中を押しながら命令をした。
「やだよ。だって立ち入り禁止だって言われてるところじゃん」
「郁斗だって一人で行ったぜ。お前、怖いのかよ」
「だったら、剛君が行けばいいだろ」
「なんだと。俺の事なめてんのか」
「ねえ、ねえ、ちょっとあっち見てよ。郁斗じゃないか、あれ」
「「えっ」」
三人の視線の先には郁斗が手招きしている姿があった。
「何だよ、郁斗いるじゃん」
「手招きして呼んでいるみたいだよ」
「郁斗のところ行って、昨夜どうしてたのか聞こうよ」
剛たちがそう言いながら郁斗に近づいていくと、郁斗が口の前に人差し指を立てて"声を立てるな"と言うジェスチャーをした。次いで、反対側の手で"こっちに来い"と手招きをしてきた。三人が近くに行くと、郁斗は地面に文字を書き始めた。
"洞穴の中に、本当に宝物があった。取りにいってお金持ちになろう"
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