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その瞬間、今までそこに立って窪みを指差していた郁斗がいきなり萎んだように地面に崩れ落ちた。
「ひっ」
中身が無くなり、皮と洋服だけになった郁斗の姿はあまりにも異様過ぎて、三人とも恐怖より驚きが勝っているようだった。
「ギギギ、久々に見つけたよ」
歪に空気を振動させて、窪みの方から声がした。三人が声のした方を振り向くと、そこには身の丈二メートルはありそうな巨大な蜘蛛の姿があった。
「うわぁーー」
三人はいっせいに出口に向けて走り出そうとしたが、靴の底が地面に張り付いたように離れなくなっている。
「ギギギ、逃げられんよ。ワタシの糸に足がくっついているからな」
勝義が靴を脱いで逃げようとしたが、今度は靴下が糸に張り付いて前のめりに倒れ込んだ。
「う、動けない。助けて」
「こっちだって動けないんだよ」
「俺たちをどうするつもりだ。殺すのか」
震えながらも、最大限の虚勢を張り剛が蜘蛛に問いかけた。
「殺す? いや最終的には死ぬがお前たちは喰われるのだ」
「くっ、喰うのか、お前が俺たちを」
「ワタシはお前たちなんか喰わないよ。ワタシにはもっと美味しいものがあるからね」
「じゃあ、何が」
「ワタシの子供たちさ」
蜘蛛がそう言った瞬間に、黒い小さい蜘蛛の子たちが三人に群がっていった。鼻、口、耳などあらゆる穴から体内に入り、消化液で溶かしながら三人の体を吸っていく。
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