第壱話 曇天、廃社、出会い

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話は10年前、ユウがまだ6つの時まで遡る。 朝になり、朝食を食べ終わった後に、自分のお気に入りの場所である村外れの今は廃れた神社に遊びに行こうと思っていたが、生憎のところ天気は曇り空でいつ雨が降ってきてもおかしくはなかった。 正直少し気が引けたが、家に1人で居てもやることがなく、退屈な思いをするだけだったので、ユウは結局遊びに行くことにした。 「行ってきまーす!!」 家には自分1人しかいないのに、ユウは大きな声でそう言って、玄関の戸を開けパタパタと曇り空の下を駆けていった。 ユウはみなしごだった。 父と母は、彼女がまだ赤ん坊だった頃に相次いで亡くなったと、かつて共にこの家で暮らしていた祖母から聞かされた。そんな自分にとって唯一の血縁者でもある祖母も一週間前に病で他界したため、ユウは現在この家で1人で暮らしている状態にある。幸いにも祖母が存命だった頃に炊事や洗濯、家の隣の畑の手入れ、週に一度村を訪れる行商人との生活必需品の買い付けの仕方などを一通り学んだため、日々の暮らしには今のところ困ってないが、心の中の果てしない孤独感は拭い去ることができなかった。 村を1人駆けていくユウを見て、村の大人達はひそひそと話し始める。 「嫌ぁねぇ、あの家の子どもだよ。」 「また心の中覗かれそうで気味が悪いったら、、、」
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