Y-4 花の日のドラマ

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🎵Ah 落ち葉舞う校庭で肩を寄せ🎵 室内に響く爽やかなBGM テーブルに着きながら 耳を傾けているだけで、心地良い気分になってくる 🎵語り合った夢は🎵 『………………』 🎵今も忘れずにいるけど🎵 ひじをつきながら両手の上に顔を乗せる 『……………』 🎵Ah 好きだった あの歌も……🎵 視線の先には 花瓶に納められた青い薔薇 🎵あの人も……🎵 『エミ、レモネードでも飲む?』 『あ……うん!』 🎵想い出に変わって 秋の空に溶けた🎵 『…………』 ずっと不思議だった 🎵かなわぬ恋に🎵 何故、我が家に毎年のように花が届けられるのか 🎵流されて🎵 それに―― 【Dear miharu】 🎵眠れぬ夜を過ごしたけど……🎵 “ミハル……って誰?” 🎵気持ちは……🎵 エミが物心つく前から贈られ続けている花―― 🎵いつでも微笑みを🎵 当たり前になっていたその事に エミも何の疑いも無く過ごしていた 🎵泣き虫にさよなら🎵 しかし 年が大きくなるにつれ、疑問もまた広がっていくことは当然だった 🎵誰でも恋をして 大人になるのよ……🎵 『………………』 母から聞かされている話には納得できない点が多すぎる 母はきっと何かを知っている 〈コトン〉 『はい、レモネード』 『……………』 🎵Ah 金色に輝いた 少女達🎵 〈ゴクゴクゴク〉 冷たいレモネードを口に流し込む 🎵おしゃべりをしながら お互いの恋の行方を🎵 飲み終わるのを見届けた母は 『どう?落ち着いた?』 エミの隣の椅子を引くとゆっくりと腰を下ろす 🎵Ah 教室の片隅で 占って🎵 『………ん?』 『いや、エミ、何かぼーっとしてるから』 🎵窓辺ではいくつもため息を落とした🎵 『……………』 『…………?』 🎵小さな胸を……🎵 『ねぇ、ママ……』 『…………なに?』 🎵踊らせて……🎵 『この“花の人”』 『“花の人”?』 🎵初めての恋 追いかけてたあの娘は🎵 『“ミハル”さんがここにいないこと、知らないんでしょ……』 『……………』 🎵愛しいあの人に🎵 『この“花の人”……可哀想だね……』 『……………』 🎵お別れの口づけ🎵 『昔、私達がここに来る前に、このウチにほかの家族がいたんだよね……』 『……そうよ……』 🎵涙をひとしずく🎵 『家族がバラバラになっちゃったんでしょ……』 『……うん……』 🎵心にかくした……🎵 『“花の人”も“ミハル”さんも……一緒の家族だったんだよね………』 『……………』 『ひょっとして、“ミハル”さんって……“花の人”の……奥さんのコトなの?』 『……………』 『……………』 『……………』 『ハァ――………』 『……………』 『エミと………』 花の方に目をやる 『この花の前じゃ――隠してちゃダメだよね……』 🎵愛しいあの人に🎵 『エミも大きくなったし……そろそろ話してもいい頃かな』 『…………え?何?』 🎵お別れの口づけ🎵 『この“ミハル”っていう人はね――ママの大切な人なんだ』 『…………え?大切なひと……?』 『そう』 🎵涙をひとしずく…🎵 『友達とか……?』 『そうね………親友以上かな』 🎵心にかくした🎵 『へぇ~~……そうなんだ……』 🎵いつでも微笑みを🎵 『でもね……“ミハル”にとって“最愛の人”が何年も前に行方不明になってしまったの……』 『…………行方不明?』 🎵泣き虫にさよなら🎵 『“ミハル”はずっと待ってた』 『………………』 🎵誰でも恋をして🎵 『でも待ちくたびれちゃったのかな』 『………………』 🎵大人になるのよ🎵 『“ミハル”は私達にこの家を預けて出ていっちゃったんだ』 🎵希望の明日へ🎵 『「きっとまた帰ってくるから」って、それっきり………』 🎵🎵 『それから数年して、花が届くようになったの………』 『…………この花?』 『そう………』 『……………』 『行方不明の……“ミハル”さんの“最愛の人”が、この“花の人”なの……?』 『そうね……』 『……………』 『エミの言うとおり、“花の人”は“ミハル”がここにいないことを知らないのかもしれないね』 『ミハルさんはどこにいるの?』 『……………どこなんだろうね……でも、もう帰ってこないかもしれない……』 『……二人とも……連絡がとれないの……?』 『……………』 『――何か私にできないかな』 『え?』 『せめて、この“花の人”に教えてあげたいんだ………“ミハル”さんがここにいないこと』 『……エミ……』 『きっと凄い優しい人なんだよ、この“花の人”……何年もここに帰れないでいて、きっと帰れない理由があるんじゃないかな……』 『……………』 『だから、ずっと花を贈っていて――』 『………………』 『でも、その花を渡したい“ミハル”さんは、ここにいないのに……………』 『………エミ………』 『………うっぐ………』 『……………』 『………ママ………なんとかしてあげたいよ………』 『………エミ………』 『……うっぐ………』 『………………』 『………………』 『ママもなんとかしてあげたいけど……』 『……………』 『……………』 『―――あれ?今年はこれだけだった?』 『―――!』 『カードが入ってなかった?エミ、知らない?』 『カ、カード……?』 『ううん、何でもない……ママの気のせい……』 『……………』 〈ドクドクドク〉 急に早打ちを始めるエミの心音 ポケットにしまったメッセージカード いつも不思議だった もう一つのコト メッセージカード 毎年必ずあったハズなのに その内容が、エミの目に触れることは一度も無かった “……………” それが今、ここにある 〈ドクドクドク〉 何が毎年そこに記されているのか―― 『ちょっと……あたし……トイレ行ってくる』 席を立つ 一刻も早く見たかった 母には話したくなかった “……………” 〈ガチャ〉 トイレに入り 〈カチッ〉 鍵をしめる 〈ドクドクドク〉 初めて触れる “花の人”からのメッセージ 『…………』 ポケットから取り出すカード 二つ折のカードをゆっくりと開いていく 〈ドクドクドクドク〉 そのカードを開く一瞬の造作ない作業が、とてつもなく重い扉を開けるかのように思えた 『……………』 やっと開かれたメッセージカード 白地の紙に浮かび上がるインクの文字―― そこに“誰かの気持ちの跡”が刻まれているという確かな現実感―― 〈ドクドクドクドク〉 『……ディアー……ミ…ハ…ル……』 文面をまばたきすることなく目で追った 【お元気ですか】 “…………” 【こんな文面を書くのも何度目でしょうか】 “…………” 【あなたにもしもこの言葉が届くなら、私は一生をかけて償いたい】 “…………” 【あなたの希望や夢を私は全て奪ってしまった】 “…………” 【取り返しのつかない事をしてしまった】 “……………” 【四六時中もあなたのことを忘れたことなどなかった】 “…………” 【ごめんよ、ミハル】 “……………” 【今でも君を愛してる】 “…………” 【追伸――】 “…………?” その最後に記された一文 『――――え!?』 【斎藤 千恵子様】 “ママ――?” 【今年もまた会えないでしょうか】 『え!?』 【会って話したいことがあります】 『……なんで……?』 【今日の正午―― “喫茶「エトランゼ」”にいます】 『……………』
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