Y‐1 愛の日のドラマ

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Y‐1 愛の日のドラマ

『――――』 〈カンカンカンカン〉 暗い夜道 〈カンカンカンカン〉 点滅する遮断機 『あ~もう参ったなぁ……』 繰り返すひとりごと 〈カンカンカンカン〉 遮断機のリズムに合わせて腕時計の秒針がせわしなく時を刻む 〈ガタンゴトン――ガタンゴトン――〉 目の前を通過する電車の時速がいつもより10キロほど遅く感じられた “……………” たまらずケータイを開く “……………” 確認する着信メール 【今日は早く帰ってきてね(^^)♡】 妻からの 心温まるLOVEメール……… “♡って………" なのに妙な違和感…… “たぶん……ロクな事がない……” 経験がそう感じさせる 『……………』 〈ガタンゴトン――ガタンゴトン――〉 それに……… 【7時までに帰ってきてね(^^)時間厳守(/^^)/⌒●~*】 “物理的に不可能だろ” いくら高度な交通体制を誇る文明都市だとしてもその要望に応じることはできない―― 〈ガタンゴトン――ガタンゴトン――〉 当然のように遅れる旨の返信をした 〈ガタンゴトン――ガタン――〉 そののち 届いたメール 【原さんのアルバムの「ハラッド」も買ってきてね♡】 要求が増えた 【もちろん初回版だよ(^^)】 プラスα 【絶対厳守( ・_・)ノΞ●~*】 “なんなんだよ……” 〈カンカンカンカン〉 右手に、カバンと一緒にぶら下げた【TSUTAYA】の買い物袋 “約束は果たしたぞ” 何とか手に入れた最後の一枚―― 「ハラッド」 『……………』 疲労感と達成感が肩を組んでお互いを讃え合っているかのような気分―― しかしながら 時刻は7時20分 分かってはいたが 何故か 無性に悔しい…… 『…………』 遮断機が開いた “………よし、行くか” 遮断機とともに わだかまりもどこかに飛んだような気がした すると――― 〈ピピピピピ〉 鳴るケータイ 『……………!!』 妻からのメール 【ついでに冷凍食品も買ってきてね♡】 『……………』 会社の社長秘書だった彼女と付き合い始めたのは2年前のこと―― 年齢も同じで、共通点も多く、それほど難なく意気投合してしまった 若いながらも器量が良く社内からの人気も高かった彼女―― 付き合えるだけで不思議だった 影ながらの社内恋愛を続け―― やっとのプロポーズ 『いいよ、別に』 『…………へ?………“別に”……って?』 時々変な彼女 さらに 妙なこだわりを持ちたがる 『そのかわり――』 『…………そのかわり………?』 『喧嘩したら……』 『う、うん……』 『離婚だよ』 条件が常にキツい “ためされてるのか?俺は――?” 夫婦生活? 苦行生活? そんな自問自答を今日もまた繰り返す―― 足の向かう先はコンビニエンスストア 入り口のドアを開けると―― 飛び込んできたBGMが心を一瞬のうちに爽やかにさせてくれる
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