Y-5 Yの日のドラマ

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ライブハウスのドアを開け、外の夜の街に出る 人通りはまばら やけに9月の風が体をしめらす―― 遠い街角―― 思わずサザンの曲が浮かんでしまう こんな切ない夜は特にね 『……………』 『あ、ちょっと待って!ちょっと待って!』 『え………』 『あの~今、ヒマ?』 若い二人組の男性 若いって……私も十分若いけど…… ……って冗談言ってる場合じゃない “ヤバい” 『ヒマでしょ??良かったら俺らと遊んでかない?』 『君、結構可愛いね~』 『い、いや、あの……』 “大ピンチ~~” 『いいじゃん行こう行こう』 腕を掴まれた(>_<) 『きゃッ』 ふ、ふりほどけない ヤバすぎ(;゜∇゜) 『あ……あの!』 『――やめろ!!』 『……え!?』 私の腕を掴む手を、その走り寄ってきた彼の手があっという間に振りほどく―― と、ふと冷静に状況を実況してしまう私 f(^^; 『俺のカノジョになにすんだよ!』 “え~~!??” いや、それでも、さすがに、こ、この展開はまったく予想できなかったし…… ヒデがそこにいた! 『ちっ、くそっ』 悪態をはきながら悪党どもは尻尾を巻いて逃げていく でももうそんな事はどうでもいい とにかく隣の…… 『……………』 『……………』 『しずか……何やってんだよ』 『…………え?』 『こんな夜にこんなトコに一人でいちゃ、アブねーだろ』 『いや、私は……』 ヒデのライブにいたんだよ 『さっきまで友達と一緒にいただろ』 『え!?』 『ただでさえ、お前あぶなかっしいのによぉ~』 『………気づいてたんだ……』 『そりゃ分かるよ』 『あんな……人がいっぱいいたのに……?』 『いっぱいって……せいぜい60人前後だろ~』 『いや……でも一生懸命に歌ってたし……そんな……ヒデが……私に気づいてたなんて驚いてる……私だったのである……』 『ん?』 『い、いや!……なんか、小説みたいに実況してしまうクセが私にはあって……』 『はぁ?』 『な、なんていうかな!?しょ、しょくぎょ~びょう~ってヤツ!???』 『……職業病?』 『そ、それだよ!それ』 『何言ってんの?……まぁ……とにかく落ち着けよ』 『………う、うん…………そうだね……』 『………………』 『………………』 ナニこの展開…… まるっきり小説じゃん(○_○)!! 『……しずか……』 『え?』 『まだこのストラップ持ってたんだな』 『―――!』 今の騒ぎで私のバッグから、ひょっこり、姿を現すストラップ―― 覚えてたの?? 『ちゃんと覚えてるからな』 『………………』 そ、そうなんだ…… 『……じゃあ~俺、行くわ』 あっ、行っちゃう(>_<) 『えっ、あ、あの、ヒデ………』 『ん?』 何か言わないと 『……久しぶりだね』 ……??? 『…………』 違う?? 『……………』 なんか違う?? 〈ドクドクドク〉 『あぁ……久しぶり』 〈ドクン!〉 彼の笑顔 『ガキじゃないんだから、帰り方くらい自分で気を付けて考えて帰ろよ』 そして去っていく背中 “……………” 〈ドクドクドク〉 “……カッコよすぎ……” 立ち尽くしながら 『……………』 なんか 言葉がしばらく見つけられない…… “ありがとう……って言えば良かったんだよね” やっぱり私はダメな女…… 伝えたい気持ちを言葉にすらできないなんて…… 小説ならスラスラ出てくるのに…… そんな小説みたいなセリフを言ってみたい…… 帰り着いた部屋…… 電気も点けずに 『……………』 私は貝になる 部屋という海底に眠る 貝になってみる 『………………』 ケータイを開いてみて 何かを描くことも 今はできない…… 『……………』 ふと聴きたくなった ドラマのBGMではない 誰のためのBGMでもなく 私だけの…… 私のためだけのBGMが聴きたかった……
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